厳しかった祖母の通夜

私には、全然敵わない祖母が居りました。
祖母は自分にも他人にも厳しい人で、私は成人しても会う度に「背筋が曲がってますよ」と怒られたものです。
書道の先生をしていて、自宅で教室を開き、何十年も教えていたのです。

祖母は1人暮らしでしたので、教室に習いにきた生徒さんが倒れた祖母を見つけてくれたようでした。
脳梗塞で、手術をしたのですがその数日後に亡くなってしまいました。

祖母のお葬式は祖父と同じお寺さんにお願いする事にしました。
祖母の1人息子である父が喪主となり、通夜を祖母宅で行っていたのです。
私は受付をしていたのですが、今までの弔問客とは少し様子の違う、見知らぬ若者達が10数名程やってきました。

その子達は恐らく下は10代半ば、上は19、20歳位です。
皆茶髪だったり金髪と髪色は派手でしたが、服装は黒のシャツ等大人しいものでした。
どうしたのかと思うと、その内の1人が「○○さんが亡くなられたって聞いたんですが、僕達も○○さんに会わせてもらえないですか」と言いました。

どうやらその子達は、祖母にお世話になったというのです。
祖母はコンビニ前にたむろしているこの子達を見つけ、「だらしない事はしない」と叱ったようでした。
最初は煩いお婆さんだと無視していたようですが、毎日声をかけられ、どんどん本当の自分のお婆さんのように思っていったのだそうです。
親も先生も叱るけれど、○○さんはちゃんと僕達の為に叱ってくれました、そのおかげで学校にもまたちゃんと行くようになりました、と言ってくれたのです。

そうしていると、また別の若い子達がやってきました。
その子達も同じように祖母にお世話になったと言ったのです。
他にも、公園でベンチに座っていたら声をかけてご飯を食べさせてくれたというサラリーマン等、色んな大人も見えました。

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正か祖母がそんな事をしているなんて、思ってもいませんでした。
当初の予定よりも弔問客は2倍に増え、合計300人以上はいたと思います。
皆祖母に世話になったと言っていて、悲しいはずの通夜なのに、想い出話しに花が咲いていました。

祖母の人柄が伺える、心のホッとするような、そんな通夜でした。
こんなに人の温かさを感じた通夜は今までで初めてだと思います。
通夜といっても悲しいだけじゃなくて、故人の新たな一面を知る事もできるのかと思いました。